カンボジア奮闘記 ~葉の章~
ぼくのカンボジア一人旅は続く。
プノンペンで知り合った日本人の人たちとディナーを楽しんだ後、
ぼくは酔いの勢いも乗って近くのビルの最上階のバーに一人で乗り込んだ。
プノンペンの街の明かりを一望しながら深酒をしていると、あたりにはすっかり人気が無くなっていた。
街を見下ろすと道路にもほとんど人がいない。
当時、プノンペンは観光客も犯罪に巻き込まれることが少なくないと聞いていた。
ぼくは身の危険を感じ慌ててお会計を済ませ、ウェイトレスの女の子にもはや恒例行事となった書をプレゼントしたが、凍りつく空気に耐えられず逃げるようにビルを降りていった。
幸いビルのすぐ近くにトゥクトゥクが止まっていた。
(トゥクトゥクとは東南アジアでよく見る三輪タクシーのこと。よくボられる。)
ぼくは急いでトゥクトゥクに駆け込んで一息ついた。
しかし、ふと隣の座席を見ると、見知らぬ上裸のカンボジア人が座っている。
カンボジア人が相乗りしてくるなんてことは滅多にない。
意味がわからず固まっていると、
「Hi!」
と声をかけてきた。
ぼくは酔っ払っていたこともあり、
カンボジアに来てからのいつものノリで
「ハイ!ブラザー!」
なんて返事を返した。
ドライバーに行き先も伝えずに上裸のカンボジア人と盛り上がっていると、彼は耳元でぼくにささやいた。
上裸「・・・Girl?」
売春であった。
ぼくは驚いて思わずこう言った。
リアリティーッ?
致命的に一文字多かった。
驚くと思わずこの単語が口をついて出てしまうのがぼくの海外での悪い癖だ。
せめて
リアリー?
であったならば少なくとも脈絡は成り立っていたはずだ。
ぼく「ア、アイアム、ソータイアード!!」
と、ぼくは見慣れぬ旅路で疲れきっており、すでに精根尽き果てている旨を涙目に訴えた。
上裸のカンボジア人はぼくがどうやら種無しであることが分かると、今度はこう提案してきた。
上裸「Marijuana~?(マリファナ~?)」
ぼく「え? ま、まり、ふぁ、、、
リアリティーッ?!
やはり一文字多かった。
というか驚くたびに
「現実ですか?!」
と聞いてくる奴の方がよっぽどキマっちゃってるだろう。
ぼくは再び
「アイアム、ソータイアード!!」
と言うと、
上裸「疲れてるからやるんだろ??(みたいなこと言われた)」
ぼくは他に何も言い訳が思いつかず固まっていた。
きっと上裸のカンボジア人もこう思ったに違いない。
困ったジャパニーズだぜ!
しかしこれはぼくの長い夜の始まりに過ぎなかった。
つづく
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